【インフルエンザ脳症】インフルエンザが重症化する原因は?

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インフルエンザに感染しても、体力のある大人であれば薬の服用をなくても回復していきます。
しかし、小児や高齢者では重症化するリスクが高いため注意が必要です。
特に、小児ではインフルエンザ脳症のリスクが高いため、早めの対応が大切です。

この記事では、インフルエンザが重症化するメカニズムを取り上げます。

炎症性サイトカインがつくられる

インフルエンザウイルスに感染すると、まず炎症性サイトカインがつくられます。
これが、インフルエンザウイルスが体に入ってきたことに対する、防御反応の最初の部分です。

炎症サイトカインが引き金になって、ウイルスから体を守ろうとする免疫が働き、ウイルスを体の外に排出しようとします。

一方で、炎症性サイトカインは、インフルエンザが重症化してしまう方向にも働いてしまいます。

 

 

インフルエンザウイルスは自力では感染できない

インフルエンザはどのように重症化していくのでしょうか。

インフルエンザウイルスは、最初に気道や腸管粘膜の細胞に感染します。

その後、感染した細胞の中で遺伝子がコピーされて、ウイルスが増えてゆきます。

増えたウイルスは、最初に感染した細胞の外に出て、ほかの細胞に向かいます。

ところが、インフルエンザウイルスはふつう、ほかの細胞に自力では侵入できません。

 




 

トリプシンの力を借りて感染する

ここでポイントになるのが、炎症性サイトカインです。

サイトカインとは、体の中でほかの細胞にメッセージを送る働きがあります。

炎症性サイトカインは、血管内皮細胞にトリプシンという酵素をつくらせるメッセージを送ります。

こうして産生されたトリプシンには、インフルエンザウイルスの感染を助ける働きがあります。

上記の通り、インフルエンザウイルスは自力では感染できませんが、トリプシンの力を借りて細胞に感染することができます。

また、最初は気道や腸管粘膜の細胞に感染しますが、気道や腸管粘膜にはもともとトリプシンがあるために感染することができます。

 

 

細胞の浮腫が引き起こされる

トリプシンはインフルエンザウイルスの感染を助けてしまうだけではありません。

トリプシンは細胞内タイトジャンクションを緩める働きをします。

タイトジャンクションは細胞間の物質の漏れを防ぐ働きをしています。

トリプシンはタイトジャンクションを緩めることにより、さまざまな細胞の浮腫を引き起こしてしまいます。

 

さらに、炎症性サイトカインは、トリプシンだけでなくMMP-9という物質もつくらせます。

MMP-9は細胞外マトリックスを分解する働きがあります。

細胞外マトリックスは、細胞を周りから支えて物理的に安定させる働きがあります。

MMP-9は細胞外マトリックスを分解することにより、血管内皮細胞の透過性が進んで浮腫を引き起こしてしまいます。

 




 

細胞の機能不全が引き起こされる

炎症性サイトカインは、細胞の機能不全にもつながることが分かっています。

炎症性サイトカインは、PDK4という酵素を増やす働きもします。

PDK4が増えるとどうなるのでしょうか。

PDK4の働きにより、糖代謝が抑制されてATPが減っていきます。

ATPは細胞の中のエネルギー物質です。
ATPが減ることは、細胞が機能不全に陥っていくことを意味します。

しかし、ふつうは糖代謝が抑制されても脂肪酸代謝が働いてカバーしてくれるため、機能不全にまでは至りません。

ところが、遺伝的な問題で脂肪酸代謝に弱点があってうまくカバーできないことがあります。

その場合、エネルギー不足になって細胞の機能不全になってしまいます。

 

インフルエンザ脳症

 

上述の通り、インフルエンザの重症化には、血管透過性亢進による浮腫と、ATPが減少して細胞が機能不全に陥ることが関係しています。
特に、こうしたことが脳血管内皮細胞で起こると、インフルエンザ脳症を発症してしまいます。
特に、小児で遺伝的な要因が重なると重症化する可能性が高まってしまいます。

 




 

ある種の解熱鎮痛薬でリスクが増す

インフルエンザに感染した際に、NSAIDsに分類される解熱鎮痛薬を服用すると、インフルエンザ脳症のリスクが増すことが知られています。
これは、NSAIDsによって炎症サイトカインが増加するためと考えられています。

上記の通り、炎症サイトカインによってインフルエンザが重症化しインフルエンザ脳症のリスクは増します。
そこに、NSAIDsが加わることでリスクがさらに増してしまいます。

特に、サリチル酸系、ジクロフェナクナトリウム、メフェナム酸という解熱鎮痛薬に関して注意が呼びかけられていますが、NSAIDs全般を避けるのが賢明です。

インフルエンザの疑いがある場合は、アセトアミノフェンを服用することが推奨されています。
アセトアミノフェンはNSAIDsに属さない解熱鎮痛薬です。

 

参考資料:

https://www.jstage.jst.go.jp/article/shonijibi/37/3/37_305/_pdf