【医療用麻薬】がん性疼痛への麻薬で依存になる?

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がんの痛みに麻薬を使用することに対して不安を感じる方がいます。

麻薬によって、薬物依存になることを心配されることが多いと思います。

 

実際には、痛みに対して適切に麻薬を使用すれば、薬物依存になることはありません。

WHO(世界保健機関)は「幅広い臨床経験によって,鎮痛を目的としてオピオイド鎮痛薬の投与を受けているがん患者には精神依存が発生しないことが明らかにされている」と述べています。

 



 

薬物依存にドパミンが関係

薬物に対する精神的依存には脳内のドパミンが関係しています。

 

依存性薬物を摂取すると、脳内のドパミン神経が活性化されます。

ドパミンによって、快感(多幸感、陶酔感)を感じるようになります。

そして、この感覚が忘れられなくなり、再び薬物を摂取したいと感じるようになります。

 

つまり、依存性薬物を摂取したときにドパミンが増えることが薬物依存につながります。

 

特に、痛みがないときに、モルヒネなどの麻薬を摂取すると、μオピオイド受容体を介してドパミンが増えることで薬物依存になってしまいます。

 



 

オピオイド受容体とは

オピオイド受容体とは、モルヒネなどの麻薬が作用する受容体のことです。
オピオイド受容体には、μオピオイド受容体、κ(カッパ)オピオイド受容体、δ(デルタ)オピオイド受容体の3種類があります。
どの受容体も、オピオイドがくっつくと鎮痛作用が働きますが、他にも様々な効果が現れます。

 

 

オピオイドとは

オピオイドとは、「麻薬性鎮痛薬」を指す言葉です。
つまり麻薬のように作用する物質のことです。
麻薬が作用する受容体に作用する物質の事で、麻薬以外にも内因性オピオイドなども含みます。

 

μオピオイド受容体とκオピオイド受容体

特に薬物依存に関係するのは、μオピオイド受容体、κオピオイド受容体の2つです。

μオピオイド受容体が活性化されると薬物依存となり、κオピオイド受容体が活性化されると薬物依存になりません。

 

 

μオピオイド受容体

μオピオイド受容体にオピオイドがくっつくとドパミンが増えます。

ドパミンが増えた結果、快感(多幸感、陶酔感)を感じるようになります。

 

ドパミンが増えて快感を感じる効果を、「報酬効果」といいます。

ドパミン神経は脳内の”報酬系”とも呼ばれます。欲求が満たされたときや報酬を得ることを期待して行動しているときに活性化されるためです。

μオピオイド受容体が活性化されてドパミンが増えると、快の感覚(多幸感、陶酔感など)が生じ、これが薬物依存につながります。

 

 

κオピオイド受容体

一方、κオピオイド受容体では反対の効果があります。

κオピオイド受容体にオピオイドがくっつくと、ドパミンが減ります(ドパミン神経抑制)。

その結果、快感が薄れ、反対に嫌悪感を感じるようになります。

κオピオイド受容体が活性化されると、薬物依存になりません。

 

痛みでκオピオイド受容体が活性化される

炎症性の痛みが生じると、ダイノルフィンという物質が増えることが分かっています。

 

ダイノルフィンは、炎症性の痛みが生じたときに脳内で増える内因性オピオイドです。

 

 

・炎症性の痛みが生じると、脳内で内因性のオピオイドであるダイノルフィンが増えます。

・ダイノルフィンは、κオピオイド受容体を刺激する性質があります。

・ダイノルフィンによってκオピオイド受容体を刺激されると、ドパミンが減るため、麻薬を投与しても快感を感じなくなります。

 

 

これが、がんの痛みのために適切に麻薬を使用すれば薬物依存にならない理由です。

まとめ

・依存性薬物を摂取したときにドパミンが増えることが薬物依存につながります。

・痛みがないときに、モルヒネなどの麻薬を摂取すると、μオピオイド受容体を介してドパミンが増えて薬物依存になってしまいます。

・炎症性の痛み生じると、脳内で内因性のオピオイドであるダイノルフィンが増えます。

・ダイノルフィンによってκオピオイド受容体を刺激されると、ドパミンが減るため、麻薬を投与しても快感を感じなくなります。

・がんの痛みに対して麻薬を適切に使用すれば薬物依存になることはありません。

 

 

参考資料:ファルマシア 2015年 51 巻 10 号 931-933、特定非営利法人日本緩和医療学会ホームページ、一般社団法人日本ペインクリニック学会ホームページ