気管支喘息では気道に炎症が起きている
昔は、気管支喘息は発作によって死に至ることも多い疾患でした。
気管支喘息の病態も明らかになっていませんでした。
1980年頃までは、気管支の平滑筋が収縮して戻らなくなり、気道がふさがれてしまう病気と思われていました。
そのため、気管支を拡張する薬が多用されていました。
1980年代になると、喘息は慢性炎症性疾患であることが明らかになります。
ただ気管支が狭くなっているのではありません。
気管支喘息では気道に炎症が起きている、ということが明らかになりました。
このように理解が深まったことから、喘息の治療が変化しました。
それまでは気管支を広げる薬がメインでしたが、吸入ステロイド薬がメインに使われるようになっていきます。
吸入ステロイドの作用
ステロイド薬は、炎症を抑えるように働きます。
炎症を起こしている細胞を減らし、炎症を引き押すメッセージを伝える物質を減らします。
吸入ステロイド薬は、発作が起きてから使用するのではありません。
症状が落ち着いているときでも、毎日使用していくことで気道の炎症を抑えていきます。
こうした吸入ステロイド薬の長期管理治療が普及したことにより、喘息による入院や死亡が減少してきたと言われています。
副作用
ステロイドというと、副作用を心配する方がおられます。
その原因は、内服のステロイドで起こる副作用と混同されているためです。
吸入のステロイドは、気管支に直接作用させるため、使用量が少なくて済みます。
全身に作用する量も少なくなります。
肺を通して血中に入るルートと、食道に流れた薬剤が消化管から血中に入るルートが考えられますが、ごく微量です。
主な副作用は、全身に表れるものではなく、口の中などに現れる副作用です。
ステロイドは免疫反応を抑える作用があります。
そのため、のどにステロイドが残っていると菌などに感染しやすくなります。
副作用として口腔内カンジダなどの報告があります。(フルタイドディスカスでは0.7%)
吸入後はうがいをして、のどや口に薬が残らないようにすることが大切です。
身長が伸びなくなる?
小児に吸入ステロイド薬を使用した結果、成長抑制が見られたという研究結果があります。
1年間の吸入ステロイド薬の使用で、1年で0.48cmの成長抑制が認められた、という調査結果があります。
また、大人になるまでに1.2cmの成長抑制が見られたという研究結果もあるようです。
そのため、「長期使用によって成長抑制と関連する可能性がある」とされています。(小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017)
吸入ステロイドによって、身長の伸びが1cmほど鈍る可能性があるということです。
ステロイドを使用することによって、喘息発作が大幅に抑制されるという利点と合わせて考えるのが大切です。
まとめ
・気管支喘息は、気道に炎症が起きる病気です。
・吸入ステロイド薬が使用されるようになり、喘息によって入院や死亡に至る人が大幅に減ったと言われています。
・主な副作用は全身性のものではなく、口やのどの感染症です。吸入後にうがいすることで予防できます。
・身長の伸びが1センチほど鈍くなる可能性があります。喘息の症状が抑えられるというプラスの面と共に考える必要があります。
参考資料:日経DI2018.3.19、フルタイドディスカス添付文書、日本呼吸器学会雑誌3(2)2014