ヘム鉄はサプリメントとして販売されていますが、医薬品にはなっていません。食べ物では肉や魚に多く含有されています。
ヘム鉄は吸収が良く、吐き気などの副作用が出にくいという特徴があります。
吸収が良く、吐き気が出にくいという特徴があります。
ヘム鉄は吸収が良い
ヘム鉄は腸からよく吸収されます。ヘム鉄の吸収率は10~30%、非ヘム鉄は1~8%です。ヘム鉄は腸でそのままの形で吸収されます。
一方、非ヘム鉄は形を変えてから吸収されます。詳しくは以下をご覧ください。
ヘム鉄の吸収
ヘム鉄は、鉄がポルフィリンという化合物に囲まれた構造になっています。ヘム鉄を摂取すると、鉄がポルフィリンからはずれることなく腸で吸収されます。
このとき、ヘム鉄に特異的な担体という”運び屋”によって運ばれます。腸で吸収されてから、鉄がポルフィリンから外れて体で利用されます。
非ヘム鉄の吸収
医薬品になっている非ヘム鉄は、鉄がクエン酸やフマル酸とくっついています。
非ヘム鉄を摂取すると還元反応によって吸収されやすい形に変化します。還元されると2価の鉄イオンという形になり、2価鉄輸送担体という”運び屋”によって腸で吸収されます。
ヘム鉄を摂取する
ヘム鉄は食べ物から摂ることができます。特に豚や牛のレバー、鶏もも肉などに多く含有されています。鉄分は春菊やパセリなどの野菜にも含有されていますが、野菜の鉄分は非ヘム鉄なので吸収率が劣ります。
ヘム鉄を肉や魚、サプリメントから摂る方が効率的です。もちろん、食品から十分に摂取することが理想的です。
ヘム鉄:豚レバー、牛レバー、牛ひれ肉、鶏もも肉、イワシ、カツオなど
非ヘム鉄:あさり、春菊、パセリ、ホウレンソウ、ブロッコリーなど
ヘム鉄は吐き気が出にくい
ヘム鉄のサプリメントの利点は、副作用の吐き気が出にくいことです。鉄がポルフィリンに囲まれているため、胃腸への刺激があまりありません。
上記の通り、吸収が良いことも利点です。
鉄は不足しにくい
基本的に鉄が不足することはありません。鉄が不足しにくい一つの理由は、鉄が体の中でリサイクルされるからです。もう一つの理由は、鉄が体の中でストックされるからです。
一つずつ解説します。
鉄はリサイクルされる
鉄の70%は赤血球のヘモグロビンが体に酸素を運ぶために利用されています。赤血球の寿命は120日です。120日経って古くなった赤血球は、リサイクルされて新しい赤血球になります。このとき鉄も再利用されています。
鉄はストックされる
体の中には、”鉄のストック”もあります。これを貯蔵鉄といいます。出血などで鉄が減っても、ストックから補給されるようになっています。基本的にストックが底をつかない限り貧血になることはありません。
このように、鉄はリサイクルされる上にストックがあるため、食べ物からの摂取はわずかで問題ありません。1日に1~2mgで必要な鉄は賄えます。
鉄の補給は女性に必要
月経などで出血が多い時には鉄が不足してしまいます。妊娠した時には、胎児の発育にたくさんの鉄が必要な上に出産時の出血の可能性もあるので鉄の補給が大切です。
このような場合には、貯蔵鉄を利用しても足りなくなってしまいます。ちなみに、子供の成長期にも鉄分が必要ですが、貯蔵鉄からの補給で間に合うため、貧血になることは稀です。(子供の成長期には【成長期応援飲料 セノビック】などの子供用サプリも利用できます。)
フェリチン値とは、貯蔵鉄の量を反映する検査値です。つまり、体の中の鉄のストックがどれくらいあるのかを表します。貧血になるときは、ヘモグロビンが減る前に鉄のストックが減るのでフェリチン値が下がります。ストックがなくなって初めてヘモグロビン値が下がり始めます。鉄剤を服用してヘモグロビン値が改善しても、フェリチン値は後から改善してきます。ヘモグロビンが十分に増えてはじめて、ストックも増えてくるわけです。したがって、鉄が不足しているかを判断する上でフェリチン値が大切です。
男性には必要ない?
成人男性が鉄欠乏性貧血になることはほぼありません。閉経後の女性が鉄欠乏性貧血になることもあまりありません。
成人男性や閉経後の女性がサプリメントなどで鉄分を摂ると鉄が過剰になってしまいます。鉄が過剰になると肝臓や心臓に負担がかかります。
医師が処方したのでない限り、成人男性や閉経後の女性は鉄サプリメントを摂取するべきではありません。
まとめ
・ヘム鉄のサプリメントには、吸収が良く、吐き気が出にくいという特徴があります。
・鉄の補給が必要になるのは、主に月経期の女性や妊婦さんです。
・成人男性や閉経後の女性は、鉄が過剰になるので鉄サプリメントは摂取しないようにしましょう。
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参考資料:日本内科学会雑誌104巻7号、「総合医療サイト」厚生労働省「総合医療」に係る情報発信等推進事業