2019年4月2日、エパデールT(イコサペント酸エチル)の第一類医薬品への移行が了承されました。
エパデールTは、これまで要指導医薬品として販売されてきました。
今回、一類医薬品への移行について、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会医薬品等安全対策部会安全対策調査会で議論されていました。
厳格な販売条件
添付文書には食事・運動療法など生活習慣の改善の必要性についての記載がされます。
また、薬剤師や登録販売者は購入者に受診を促す受診勧奨を行う必要があります。
このように、エパデールTには厳格な販売条件があります。
生活習慣病を改善する薬の一般用医薬品へ承認については、医師会が一貫して反対の姿勢を示しています。
それでも、承認拒否事由に該当する反対意見は出されなかったため、一類医薬品として承認されることになりました。
エパデールとは
エパデールは、中性脂肪を改善する薬です。
成分はイコサペント酸エチルです。エイコサペンタエン酸(EPA)ともいいます。
医療用として長く使用されてきた薬です。
医療用として長く使用されてきた薬です。
高脂血症には、中性脂肪が高くなるものとコレステロールが高くなるものがあります。どちらも動脈硬化を引き起こし心血管疾患につながります。
イコサペント酸エチルは、肝臓での過剰な中性脂肪の合成を抑えて、血中の中性脂肪を減らします。
エパデールT(市販薬)の対象は、健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪値の方です。
つまり、重度の中性脂肪高値の方は対象となっていません。
健康診断等で、「通院するほどではないけど、中性脂肪が高めなので気を付けて」と指摘された方などが対象となります。
~さらに詳しく~
もともとは魚の油
エパデールの成分‐イコサペント酸エチルは、エイコサペンタエン酸(EPA)ともいいます。
EPAは、元々魚などに含まれる油です。
EPAの効果は、グリーンランドの人々の食生活から明らかになりました。
グリーンランドの人々は、魚やアザラシをよく食べます。そして、心筋梗塞や狭心症などになる人が少ないことが分かりました。
そこで、EPAの効果が研究されました。
EPAの作用
EPAにはさまざまな作用があります。
1.血清リポ蛋白の代謝促進
血中の脂質の塊である、リポ蛋白を壊すのを助けます。
2.脂質の生合成・分泌を抑制
肝臓で脂質がつくられるのを邪魔します。
3.血小板凝集抑制
血小板が集まって血栓ができるのを邪魔します。
4.動脈の弾力性保持
EPAは血管の壁に取り込まれて、血管の弾力性を良くします。それにより、動脈硬化を防ぎます。
注意点
血小板凝集抑制作用があるため、出血している人は使用できません。
具体的には、血友病、毛細血管溺弱症、消化管潰瘍、尿路出血、喀血、硝子体出血などの方は服用できません。
手術を予定している方も服用できません。
ワルファリン、アスピリンなどの抗血栓薬を服用している方も服用できません。
効果が出すぎて、出血の恐れがあります。
エパデールだけに頼らない
添付文書には大きく以下の記載があります。
「中性脂肪異常の改善には、生活習慣の改善をあわせて行うことが大切」
市販の医薬品だけで中性脂肪をコントロールすることはできません。
運動や食事療法などを組み合わせて治療することが必要です。
また、中性脂肪が高値であるにも関わらず、漫然と市販薬を使用し続けることも危険です。
服用後も、定期的に検査を受けることが大切です。
まとめ
・中性脂肪異常改善薬エパデールTが一類医薬品になることが承認されました。
・成分はイコサペント酸エチルです。イコサペント酸エチルは血中の中性脂肪を減らします。
・市販のエパデールの対象は健康診断等で指摘された境界領域の中性脂肪値の方で、重度の高脂血症の方は対象でありません。
・エパデールの作用には、血清リポ蛋白の代謝促進、脂質の生合成・分泌を抑制、血小板凝集抑制、動脈の弾力性保持があります。
・血小板凝集抑制作用があるため、出血している人は使用できません。
・中性脂肪異常は、運動や食事療法などを組み合わせて治療することが必要です。
・服用後も、定期的に検査を受けることが大切です。
参考資料:エパデールSインタビューフォーム、添付文書、エパデールT添付文書