内分泌代謝

ゾルトファイ配合注の作用と”忘れたとき”の対処法

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このサイトでは、患者さんに薬の説明をする薬剤師の視点で薬の解説をしています。
普段、患者さんに説明しきれないことまで、詳しく解説します。

糖尿病の新しいメカニズムの薬や、新しい配合の薬が登場しています。
ゾルトファイ配合注は、インスリンGLP-1作動薬を組み合わせた配合薬です。
この記事では、糖尿病治療薬ゾルトファイ配合注の作用をまとめています。
用量調節や注射を忘れてしまった時の対処法も解説しています。

 

 

糖尿病治療薬の組み合わせ

糖尿病治療薬には、様々な種類の内服薬に加えて、インスリンの分泌を促進するGLP-1受容体作動薬、インスリン製剤が使用されます。様々な組み合わせで一緒に服用しながら治療していきます。
その中でも、GLP-1受容体作動薬とインスリン製剤の組み合わせは、スタンダードな治療になっています。そのことが、日本糖尿病学会のガイドラインにも示されています。
ただし、どちらの薬も注射薬であるため、2種類以上の薬を毎日注射することが患者の負担になってきました。ゾルトファイ配合注は、GLP-1受容体作動薬インスリン製剤を一つの注射剤に配合した薬です。

 

 

 

ゾルトファイ配合注とは



ゾルトファイ配合注は、トレシーバビクトーザを一つにした配合剤です。

トレシーバインスリン デグルデクというインスリン製剤です。インスリンを補充することで、血糖値を下げる薬です。ビクトーザは、リラグルチドというGLP-1受容体作動薬です。インスリンの分泌を増やす作用があります。インスリンが分泌されない時には、血糖値に作用しません。

ゾルトファイ配合注は、ビクトーザトレシーバという作用の違う二つの薬の相乗効果を狙った薬です。

 

 

インスリンデグルデク(トレシーバ)



インスリン デグルデクは、インスリンの血中濃度が長く持続する持効型インスリンです。血中濃度が持続する仕組みは以下の通りです。

 

幾つものインスリンがくっついている

インスリンデグルデクは、幾つものインスリンがつながったつくりになっています。具体的には12個のインスリンがくっついたダイヘキサマーとなっています。(6個のインスリンがくっついてヘキサマーとなります。そして、2個がヘキサマーがくっついてダイヘキサマ―となります。)皮下注射すると、さらに幾つものヘキサマーがくっついたマルチヘキサマーとなります。

 

少しずつ放出される

こうして、たくさんの数のインスリンがくっついたマルチヘキサマーという形で皮下組織の中にとどまります。マルチヘキサマーから少しずつインスリンが外れて血液中に放出されていきます。少しずつ血液中に放出されていくため、血中濃度が持続します。

血液中に放出されたインスリンは、アルブミンというたんぱく質とくっつきます。標的組織では、インスリンが徐々にアルブミンから外れて作用していきます。

 

血糖値を下げる

放出されたインスリンは、インスリン受容体にくっつくことで作用します。骨格筋や脂肪組織で糖を取り込むように作用します。肝臓では、糖をつくらせないように作用します。こうして血糖値を下げていきます。

 

リラグルチド(ビクトーザ)



リラグルチドはGLP-1受容体作動薬です。GLP-1のような働きをして血糖値を下げる働きがあります。

GLP-1は、体の中で分泌されるインクレチンというホルモンの一種で、血糖値を下げる働きがあります。血糖値が高くなると、膵臓のβ細胞からインスリンが分泌されます。このとき、GLP-1も膵臓に作用してcAMPという物質の量を増やします。cAMPはβ細胞の働きを高めて、インスリンの分泌量を増やします。GLP-1は血糖値が上がってインスリンが分泌されるときのだけ、働いてインスリンの分泌量を増やします。例えて言うと、”エンジンをかける”のではなく、”ギアを上げる”作用といえます。インスリン分泌のギアを上げることで、インスリン分泌を増強します。

 

リラグルチドの作用はGLP-1と同じで、GLP-1受容体にくっついてインスリン分泌の”ギアを上げる”ことで、インスリン分泌を増強します。さらに、グルカゴンというホルモンの分泌を抑える作用もあります。グルカゴンはインスリンとは正反対の作用があり、血糖値を上昇させます。血糖値が下がった時に膵臓から分泌されて、肝臓のグリコーゲンを分解したり、アミノ酸から糖を作ったりして血糖値を上昇させます。リラグルチドは、グルカゴンの分泌を抑制することによって血糖値が下げるという作用もあります。

 

 

1回10ドーズから開始する



1日1回、毎日同じ時刻に注射します。1回10ドーズから開始します。ゾルトファイ配合注を使用する単位として“ドーズ”という言葉が使われています。1ドーズには、インスリン デグル
デク1単位とリラグルチド0.036mgが含まれています。1ドーズ単位で調節することができます。

 

・1日1回、毎日同じ時刻に注射します。

・1回10ドーズから開始して、1ドーズ単位で調節します。

 

 

注射を忘れた場合

ゾルトファイの注射を忘れた場合は、1回飛ばすことはしませず、忘れた時点で注射をします。ポイントは8時間以上あけることです。

 

・次の注射まで8時間以上あるとき
すぐに注射します。次の投与は、通常の時刻に注射します。

・次の注射まで8時間以内しかないとき
すぐに注射します。次の投与まで8時間以上あける必要があります。次の投与は時間をずらして注射します。その次からは、通常の時刻に戻します。

 

 

 

まとめ

・ゾルトファイは、トレシーバの成分インスリンデグルデクとビクトーザの成分リラグルチドを一つの注射剤にした薬です。

・インスリンデグルデク、インスリンの血中濃度が持続する持効型インスリンです。

・リラグルチドはGLP-1受容体作動薬で、GLP-1のような作用をする薬です。GLP-1と同じく、GLP-1受容体にくっついてインスリンの分泌量を増やしていきます。エンジンをかけるのではなく、ギアを上げるような作用といえます。

・ゾルトファイの注射を忘れた場合のポイントは、8時間以上あけることです。

 

 

参考資料:ゾルトファイ配合注フレックスタッチ添付文書、インタビューフォーム

 

*医薬品の使用に当たっては、担当の医師、薬剤師等の指示に従って下さい。

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