レムデシビルは新型コロナウイルス治療薬として2020年5月7日に承認されました。これで、日本でも新型コロナウイルスの治療に使えるようになりました。
・臨床試験では回復までにかかる時間や、症状が軽くなることが確認されています。
・RNAポリメラーゼという酵素によって新しくつくられるRNAに取り込まれて、その後RNAの伸長を邪魔します。
・レムデシビルは特例承認された薬のため、副作用についての情報が少ないのが現状です。
この記事では、レムデシビルの作用や注意点について紹介します。
*2020年5月12日時点での情報です。
点滴で投与する
レムデシビルは点滴で投与する薬です。商品名はベクルリー点滴静注液100㎎です。
1日目にレムデシビル200㎎を点滴したのち、2日目以降は100㎎を点滴します。1回に30~120分かけて点滴します。
重症でECMOなどを使用している場合は、10日間まで使用できます。ECMOや人工呼吸器を必要としない患者さんの場合は5日間まで使用し、改善しない場合は10日間まで使用できます。
臨床試験
臨床試験では回復までにかかる時間や、症状が軽くなることが確認されています。
18才以上の重症者を対象として無作為化二重盲検が行われ、回復までにかかる時間が比較されています。その結果、回復までにかかる時間の中央値はプラセボで15日間、レムデシビル投与で11日間でした。レムデシビルによって回復が早くなるという結果になっています。
重症者を対象とした別の試験では、半数以上で症状が改善しました。
作用機序
レムデシビルはコロナウイルスの増殖を抑制します。
レムデシビルは、活性代謝物に変換されてから効果を発揮します。活性代謝物は、生体に存在するATPと似たかたちをしています。ATPはRNAの前駆体-つまり材料でもあります。
活性代謝物は、ATPに紛れてRNAに取り込まれます。RNAポリメラーゼという酵素によって新しくつくられるRNAに取り込まれて、RNAの伸長を邪魔します。こうして、新しいRNAが出来上がるのを邪魔することで、ウイルスの増殖を抑制していきます。
注意点
レムデシビルを投与すると、肝臓や腎臓に負担がかかることが分かっています。そのため、肝機能や腎機能が低下している患者さんには投与しないことが望ましい薬です。
妊婦や子供には、「有効性が危険性を上回ると判断される場合」に、慎重に使うことができます。
レムデシビルは特例承認された薬のため、副作用についての情報が少ないのが現状です。最新の情報を参照しながら使用されます。
まとめ
・レムデシビルは新型コロナウイルス治療薬として2020年5月7日に承認された薬で、入院患者に点滴で投与されます。
・臨床試験では回復までにかかる時間や、症状が軽くなることが確認されています。
・RNAポリメラーゼという酵素によって新しくつくられるRNAに取り込まれて、その後RNAの伸長を邪魔します。
・レムデシビルは特例承認された薬のため、副作用についての情報が少ないのが現状です。
参考資料:ベクルリー点滴静注-添付文書