トルリシティは、インスリンの分泌を促進して血糖値を下げる薬です。インスリンの分泌を促進するGLP-1というホルモンのような働きをします。
直接インスリン分泌を促すわけではありませんが、インスリンの分泌量を増やします。
正式名称は、「トルリシティ皮下注0.75mgアテオス」です。
注射薬なので勘違いするか違いますが、インスリン注射ではありません。
GLP-1の働き
まずGLP-1の作用について整理します。
GLP-1は食後に分泌されてインスリンの分泌を増強します。直接インスリンの分泌を促進するわけではありません。インスリンの分泌量を0から100にするわけではありませんが、インスリンの分泌量を増やします。
食事を取ると血糖値が上がります。血糖値が上がると、糖が膵臓のβ細胞にくっついてインスリンが分泌されます。この時、小腸からGLP-1も分泌されます。GLP-1は膵臓のβ細胞にくっついて、インスリン分泌を増強します。
GLP-1は、直接インスリン分泌を促すわけではなく、インスリン分泌を増強します。繰り返しますが0から100にするわけではなく、10を20にするような作用です。GLP-1はインスリン分泌を助ける脇役とも言えます。ただし、GLP-1はDPP-4という酵素ですぐに壊されてしまうため、作用は持続しません。
トルリシティの3つの作用
トルリシティはGLP-1に似た作用をする薬です。このような薬をGLP-1アナログと言います。
GLP-1と同じく、インスリンの分泌を増強します。直接インスリンの分泌を促進するわけではありません。インスリンの分泌量を0から100にするわけではありませんが、インスリンの分泌量を増やします。
血糖値が低いときは、インスリンの分泌がないので、GLP-1アナログは作用しません。血糖値が低いときは作用しないので、低血糖が起こりにくい薬です。
GLP-1との違いは、酵素によって壊されないという点です。GLP-1はDPP-4という酵素で壊されてまいますが、トルリシティはDPP-4によって壊されません。そのため効果が持続します。
以下の作用によっても血糖値を下げます。
✔グルカゴン分泌抑制作用
血糖値を上げる働きをするグルカゴンを減らして、血糖値を下げます。
✔胃内容排出遅延作用
食べたものが胃から腸に運ばれるのを遅らせます。糖の吸収がゆるやかになり、急な血糖値の上昇が抑えられます。
トルリシティを使うのを忘れたとき
✔次回まで3日以内のとき
気づいた時点ですぐに使います。次に使う曜日は変更しません。1日ずらす必要はありません。
✔次回まで3日未満のとき
今回は使いません。この週は飛ばします。次は、決めてあった曜日に使用します。
注意点
✔インスリンとの併用
基本的にインスリンと一緒には使用できません。
✔DPP-4阻害薬との併用
基本的にDPP-4阻害薬と一緒には使用できません。トルリシティもDPP-4阻害薬もGLP-1受容体を介して作用するためです。
✔低血糖
繰り返しになりますが、トルリシティは低血糖のリスクの低い薬です。血糖値が高いときに作用するためです。ただし、他の糖尿病治療薬を服用している場合には低血糖に注意が必要です。
まとめ
GLP-1は食後に分泌されるホルモンで、インスリン分泌量を増やします。トルリシティはGLP-1に似た作用をする薬です。
トルリシティを使うのを忘れたときは、3日間(72時間)以上の間隔を空けるようにしましょう。
インスリンやDPP-4阻害薬との併用はできません。他の糖尿病薬と併用する時は低血糖に注意が必要です。
参考資料:トルリシティ皮下注0.75mgアテオスインタビューフォーム、添付文書