トラムセットは、痛みに効果のあるトラマドールとアセトアミノフェンを配合した薬です。
腰痛や変形性膝関節症、関節リウマチなどの痛みに効果を発揮する一方で、吐き気や眠気などの副作用に注意が必要です。
この記事では、トラムセットの作用機序を服作用について解説しています。
トラムセットとは
トラムセットは、トラマドールとアセトアミノフェンを配合した鎮痛薬です。適応は、「非オピオイド鎮痛剤で治療困難な非がん性慢性疼痛、抜歯後の疼痛」です。
トラマドールは、トラマールという商品名でがんの痛みに使用されてきました。
アセトアミノフェンは、1950年代から使用されてきた解熱鎮痛薬です。市販薬でも広く使用されており、おもに中枢で鎮痛効果を発揮する薬です。
トラムセットは、解熱鎮痛薬(NSAIDs)の使用継続で胃潰瘍等の副作用の心配がある場合などに処方されます。腰痛症や変形性膝関節症、関節リウマチなど、様々な疾患の慢性疼痛に使用されています。
痛みの伝わり方
体のどこかで痛みの刺激が加わると、その情報が神経を通して脳へと伝えられます。末梢の神経から、脊髄を通して脳へと情報が伝わります。神経の中では電気刺激として痛みが伝わります。そして、神経のつなぎ目の部分(シナプス)では、神経伝達物質が放出されて情報が伝えられます。
痛みを抑える神経
痛みの伝達を抑える抑制系神経もあります。抑制系神経からはセロトニンとノルアドレナリンが放出されます。セロトニンとノルアドレナリンが痛みの伝達を抑える働きをしています。放出されたセロトニンとノルアドレナリンは、一部は元の神経に再取り込みされています。
トラマドールのオピオイド受容体への作用
トラムセットに配合されているトラマドールは、オピオイド鎮痛薬に分類されます。オピオイドとは、「麻薬性鎮痛薬」のことで、”麻薬のように”作用する物質のことをいいます。オピオイド受容体(μ、δ、κ)という、モルヒネなどの麻薬が作用する受容体に作用します。例えばモルヒネは、μオピオイド受容体に作用することで鎮痛効果を発揮します。
トラマドールも、μオピオイド受容体に作用して鎮痛効果を発揮します。トラマドールがμオピオイド受容体にくっつくと、痛みを伝える物質が減ります。具体的には、グルタミン酸やサブスタンスPという痛みを伝える物質が放出される量が減ります。それによって、痛みの伝達が抑えられます。
ノルアドレナリンとセロトニン
トラマドールには、ノルアドレナリンの再取り込み阻害作用、セロトニンの再取り込み阻害作用があります。この作用によって、ノルアドレナリンとセロトニンの量が増えます。この二つの物質が増えることで、痛みの伝達が抑えられます。
アセトミノフェンの作用
アセトアミノフェンは、主に中枢神経系で鎮痛作用を示す薬です。アセトアミノフェンは、痛みの伝達にブレーキをかける神経を強める働きがあると考えられています。他の解熱鎮痛薬(NSAIDs)とは異なりシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害作用が弱く、抗炎症作用がほとんどありません。
*アセトアミノフェンについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
トラムセットは、トラマドールとアセトアミノフェンという異なるアプローチをする痛み止めを配合することで、より効果的に鎮痛効果を発揮する薬です。
嘔吐などの副作用
特に服用開始直後に、吐き気や眠気、めまいなどの副作用が多く見られます。(悪心41.4%、嘔吐26.2%、傾眠25.9%、浮動性めまい18.9%)などです。吐き気だけでなく、嘔吐をして服用を中止する方も見られます。
1日1錠から服用を開始する方法
副作用を最小限にする為に、1日1錠から服用開始して徐々に増量していくことが勧められています。最初の3日間は、1回1錠寝る前に服用します。吐き気止めの薬(ノバミンなど)を併用します。寝る前に服用することで、副作用自覚しにくくなります。4日目からは1日2錠(朝夕1回1錠)で服用します。8日目からは、症状に応じて1日3錠服用します。この方法は、医師による処方の1例です。
このように、トラムセットは吐き気、嘔吐などの副作用に注意しながら服用する必要があります。
まとめ
・トラムセットは、トラマドールとアセトアミノフェンという異なるアプローチをする痛み止めを配合することで、より効果的に鎮痛効果を発揮する薬です。
・トラマドールは、μオピオイド受容体に作用して鎮痛効果を発揮します。
・トラマドールは、ノルアドレナリンとセロトニンの量を増やすことで、痛みの伝達が抑える作用もあります。
・トラムセットは、特に服用開始直後に、吐き気やめまいなどの副作用に注意が必要です。
日経DI2011/6/3 、2013/3/18、トラムセット添付文書、トラムセットインタビューフォーム、トラマールインタビューフォーム