慶應義塾大学病院で、新型コロナウイルス以外の理由で入院する患者と手術する患者にPCR検査を行ったところ、陽性率が約6%だったという報告があります。これは、市中での感染の状況を反映している可能性があると言われています。それだけ新型コロナウイルスが蔓延していると思われます。
感染が拡大するということは、検査をするときの有病率が上がるということを意味しています。有病率が上がると陽性的中率は上がります。PCR検査の意義は高まっていると言えそうです。
・陽性的中率は、検査で「陽性」と判定された人のうち本当にウイルス感染している人の割合です。
・感染者が多くなる-つまり有病率が高くなると、陽性的中率は高くなり検査の精度が増します。
・感染者がわずかの時は、PCR検査の数を絞る必要がありましたが、感染が拡大してからはPCR検査の数を増やす必要があると思われます。
重要なのは陽性的中率
検査の感度、特異度、陽性的中率については以下の記事でまとめてあります。
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PCR検査の感度、特異度、陽性的中率とは【新型コロナウイルス】
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・感度とは、ウイルス感染しているときに「陽性」と正しく判定する割合です。
・特異度は、ウイルスがいない場合に「陰性」と正しく判定する割合です。
・陽性的中率は、検査で「陽性」と判定された人のうち本当にウイルス感染している人の割合です。
この記事では、陽性的中率の重要性を書いています。陽性と判定された人が、本当に感染している割合を示しています。陽性と判定されても、実は陰性の人が多く含まれていると検査の意味がなくなってしまいます。
陽性的中率は、全体の有病率によって変化します。1000人を検査対象として、検査の感度を60%、特異度を99%と仮定します。このとき、有病率が10%の時の陽性的中率は約87%になります。つまり、10人に1人が感染している集団を検査すると、陽性と判定された人のうち87%が本当にウイルスに感染している人です。かなり信頼できる検査と言えます。
もし有病率が1%とすると、陽性的中率は38%になります。陽性と判定された人のうち、本当に感染している人はわずか38%ですから、あまり意味のない数字と感じられます。感染があまり広がっていない状況で、検査を拡大していくことには問題がありそうですね。
有病率が上がってきた
2020年4月末の時点では、かなり日本国内で新型コロナウイルス感染が広がってきたと考えられています。検査で陽性と判明して人以外にも、たくさんの人が感染していると考えられています。
慶應義塾大学病院で新型コロナウイルス以外の理由で入院する患者と手術する患者にPCR検査を行ったところ、陽性率が約6%だったという報告があります。これは、市中での感染の状況を反映している可能性があると言われています。それだけ新型コロナウイルスが蔓延していると思われます。
仮に、無作為に抽出した人たちにPCR検査を受けてもらったとしても、陽性と判定される人がかなりいると考えられます。つまり、有病率が高くなってきていると言えます。有病率が高くなっているので陽性的中率も高くなり検査の精度は保たれそうです。
厚生労働省は、当初はPCR検査の検査数を絞っていましたが、最近では検査数を増やそうとしています。たくさんの人に検査を行っても陽性的中率は下がらず、検査の精度は保たれると考えられます。
検査を拡大していくことで、感染の全体像が把握しやすくなるということだと思います。
まとめ
PCR検査の陽性的中率は、有病率によって変化します。当初は、感染している人はごくわずかで、有病率は低かったため、精度を保つためには検査数を絞る必要がありました。
感染が拡大して有病率が上昇してきた状況では、より多くの人を検査しても陽性的中率は下がらないと思われます。検査を拡大していくことで感染の全体像を把握することが重要になってくると考えられます。
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